2017年4月20日木曜日

投資で勝つために必要なものとは? 『新しい株式投資論ー「合理的へそ曲がり」のすすめ (PHP新書) 山崎 元(著)』

NISAとかを利用して株式投資を始めてみようかと考えている人もいると思いますが、その前に絶対読んでおいた方がいいオススメの本が山崎元さんが書かれた『新しい株式投資論ー「合理的へそ曲がり」のすすめ』です。


新しい株式投資論―「合理的へそ曲がり」のすすめ (PHP新書)
山崎 元
PHP研究所
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10年も前に発売された本ですが、考え方は今でも通用します。
山崎さんの性格なのかもしれませんが、文章に勿体つけるところが一切無く、「結論→理由」という流れで書かれているので、気持ち良く読み進めることができました。新書版で230ページ程なので、読むのが速い人なら1日あれば読み終えることができるのではないでしょうか。投資経験が長い人なら第4章を読むだけでも著者の言いたいことは分かると思います。

株式投資に努力は不要

 株式投資は不思議な世界だ。
 プロのファンドマネージャーの運用成績の平均は、ならして見ると、株式市場の平均に勝てない。(中略)しかし、公平に見てプロのほうが、知識も情報も豊富だろう。それなのに、プロが勝てない株式投資とは、一体どのような性格のゲームなのか。彼らの努力や勉強が報われないのは、なぜか。
(P.3より引用)
サルにダーツを投げさせて作ったポートフォリオの方が、プロのファンドマネージャーが作ったポートフォリオよりも運用成績が良かった、という話は聞いたことがあるかもしれません。 
いくら勉強しても、どれだけ経験を積んでも、サルに負けてしまう株式投資という不思議な世界で、どうすれば儲けることができるのか。
結論から述べる。株式投資で成功するために必要なものは、一に「運」、二に「センス」だ。
(P.14より引用)
のっけから身も蓋もない結論です(笑)。
経済やチャートの分析方法を勉強したからといって勝てるものではないし、何年も経験を積んだからといって勝てるものでもない。
そして、「運」は自分ではどうしようもないので、残りの「センス」を磨くしかなく、「センス」を磨くにはそれほど時間や経験は必要ないが、先入観や自分に都合の良い期待を捨てなければならない、と山崎さんは言います。

株式投資に必要な「センス」

では「センス」とは何なのでしょうか。
「株式投資は不美人投票である」と主張したい。端的に言って、これが株式投資のコツであり、株式投資に必要な「センス」の半分以上を説明すると思う。
(P.218より引用)
ケインズの「株式投資は美人投票だ」というのは聞いたことがあるかもしれません。自分が美人だと思う人ではなく、他の多くの投票者が美しいと思う人に投票しなければ勝つことはできない、というあれです。
一見正しいようにも思えますが、皆が高評価している銘柄にその時に投資しても、その評価はすでに株価に反映されているので、たいして儲かりません。
感覚的に言うと、現在、注目と人気を集めている美人を少し遠ざけて、不人気なのだけれども長所がある半美人、どう考えても人気面で評価されているとは思えない不美人的な銘柄に投資することが、株式投資ゲームのコツなのだ。
(P.225より引用)
美しい人が更に美しくなる確率より、今は評価の低い人が化粧や服装などの工夫によって以前よりも評価が改善する確率の方が高いということです。
メガネを取ったら意外と美人だったとか、怠け者がちょっと頑張ったらすごく褒められるみたいなことですね。
隠れた魅力に気づいている人は少ないけど、ちょっとしたキッカケでその魅力を皆が知るようになって評価が高まる可能性が高い、そういう銘柄を見抜く能力が山崎さんの言う「センス」の半分の意味。

徹底的に合理的に行動する

では「センス」のもう半分の意味は何でしょうか。
本書の内容から自分なりに解釈すると、
自分の行為や他人の行為が合理的なのか、それとも非合理的なのかを見極める能力のこと
ではないかと思います。
山崎さんは本書の中で、「分割購入」「ドルコスト平均法」「利食い/損切りの目標株価の設定」「テクニカル分析」など、初心者向けの投資指南本には必ずと言っていいほど紹介されている投資手法を、いずれも非合理的だとしてバサッと一刀両断に切り捨てていきます。
これらは一見すると合理的に思えるので、非合理的だと言われてもすぐには納得できないかもしれません。
だが、たとえば分割売買やドルコスト平均法が、投資の方法として合理的ではない、ということについては、意図的に頭を使って注意を向けていないと、気づきにくいし、運用結果には「運」の要素の影響が圧倒的だから、経験を糧にして、正しい原則の理解に至ることが、しばしば難しい。
(P.19より引用)
株式投資は「運」がほとんどを支配するゲームであり、非合理的な行動を取っても偶然儲かってしまうことがあるために、自らの非合理的な行動に気づきにくいのです。
しかし、「運」がほとんどを支配するからこそ、感情的に納得できなくても徹底的に合理的な行動を取り、自分でコントロールできる僅かな勝つ確率を少しづつ積み上げていくよりほかはないのです。
それはサルにはできない、人間だけができることではないでしょうか。

「逆」ではなく「裏」を取れ

 それでは、無意味な不利を背負わないために、合理的な行動原則を尊重することは当然として、それ以外にどうやって、プラスの「差」を作る手立てがあるのだろうか。
 著者の考えるアプローチは、他の市場参加者が陥りやすい誤りを避け、願わくは、これを少々利用して、自らにとっての確率を少しでも有利に改善することだ。
(P.20より引用)
山崎さんはこのアプローチのことを「逆」ではなく「裏」に張る感覚だと説明しています。
手数料などのはっきりしている無駄なコストは省きつつ、他人の非合理的な行動を嗅ぎ分け、先回りして待ち伏せするような感じでしょうか。
前述した「不美人投票」の考え方は、まさに皆が気づく前に買っておいて、評価が高くなるのを待ちぶせするのと同じですね。
ただ実行するのは勇気がいると思います。
先回りして待ち伏せしていても一向に獲物が現れなかったり、裏を取ったつもりが逆に裏を取られているかもしれません。
皆と同じ投資手法を取っていれば安心できるでしょうし、失敗した時も自分のやり方は間違っていなかったと言い訳できるでしょう。
しかし、それではいつまでたってもダーツを投げるサルには勝てないのです。